食物の認識

目の前の食べ物を視覚や嗅覚、触覚などで判断し、食物を食物として認識します。このとき、食欲や心理的要因、腕の運動機能なども影響します。そして、何をどのようなペースで食べるかを判断します。認知症や高次脳機能障害などで認知機能が低下した方や意識障害や食欲不振の場合は、食べものを口に運べません。こういう場合は、食事の彩りや香りを工夫したり食器を工夫して華やかさや季節感の演出をします。片麻痺や関節可動域制限、震えがある方は食べ物を食器から口までうまく運べません。この場合は、食事介助や食具の工夫、腕の運動機能改善などを行います。

前歯でのかじりとり

歯根膜感覚のある敏感な前歯でかじり取りをして、一口量を調節します。これがうまくできると、詰め込みや丸呑みが防げます。とうもろこし、骨付きチキン、おにぎりで練習しましょう。

もぐもぐ

くちびるを閉じて、まず、片側の奥歯で数回かみ、次に、反対側の奥歯で数回かみます。これをくりかえしながら、左右の奥歯を交互に使用しながら、舌や口腔周囲の筋肉を使って、舌背中央に食物を乗せます。舌を使い、食物は、唾液と混ぜ合わせ、飲み込める量にします。味覚は甘味・酸味・苦味・塩味・うま味の混合されたものがにおいと組み合わさって、舌や鼻で感じています。食材の性質(なめらかで均一なもの、ざらざらした粒のあるもの)、温度(熱い、冷たい)、刺激の強弱、味の濃さ、視覚情報(色など)も影響してきます。かむことで、唾液や胃液などの分泌も促され、消化吸収しやすくなります。歯根膜で食感を感じます。30回程度かんで食べるようにすると良いと思います。歯周病の治療や歯の治療、歯を補う治療も重要になります。舌口唇運動機能も維持することが重要になります。

かんでいるときの下の前歯の運動経路は食物に影響されず、全部の歯があたる位置からスムーズに開口し、その後作業側へ凸になって口をとじるパターンと非作業側へ向かって口を開いた後、作業側へ向い、その後凸になってて口をとじるパターンが正常とされています。斜めにあごを動かして、奥歯ですりつぶして食物を粉砕します。

軟口蓋(上あご奥のやわらかいところ)が閉じて、鼻腔との交通を遮断し、口腔内の圧を高めて食物を舌の奥やのどへと送ります。パーキンソン病の方などや舌圧が低い方など舌の運動機能が低下している人はうまくのどへ送りこめななくなったり、窒息したりします。その場合舌圧を上げるトレーニングを行う必要があります。

ごっくん

嚥下(飲み込み、『ごっくん』)は、呼吸停止して、唇は閉じ、舌先は硬口蓋(上あご手前の硬いところ)に押し付けて固定、上下の全部の歯をかみあわせて行います。0.5秒の嚥下反射によって食道まで送ります。舌骨と喉頭(のどぼとけ)が上に移動して、食道の入口が開くと同時に喉頭蓋(気道をふさぐふた)が下がり、声門を閉じるとともに呼吸停止が起こります。うまくいかない人は、水気のあるものにとろみをつけたり、自力で食事ができる60度リクライニング位または食事介助必要な30のリクライニング位や仰向けになったりして誤嚥を防ぎます。頭を少し前に倒しても誤嚥を防げます。

食物は重力や蠕動(ぜんどう)運動により胃へと送ります(液体では3秒、固形物では8秒)。食後30分程度はなるべく横にならないようにしましょう。胃食道逆流症は胸のムカつきの他誤嚥性肺炎の原因ともなります