口唇口蓋裂の予防について

口唇は1ヶ月から2ヶ月、口蓋は2ヶ月から3ヶ月の時期に作られます。日本では口唇裂や口蓋裂の発生率はは約500人に1人(0.2%)です。手術や機能訓練などで治療することはできますが、本人や家族にも多大な労力がかかります。遺伝の影響や原因不明のものが多いため、避けられない場合もありますが、必要な栄養素を摂取することで予防できる可能性もあります。

予防効果が期待される栄養素をご紹介いたします。

予防効果のある栄養素 多く含む食材 一緒に摂ると良い栄養素
葉酸 葉野菜、枝豆 ビタミンC(柑橘類、ピーマンなど)
いわし、マグロ、カツオ

赤身肉、レバー

ほうれん草、小松菜

卵黄、海藻類

タンパク質 肉、魚、卵

大豆、米、ブロッコリー

ビタミンC
カルシウム 牛乳、乳製品、小魚

海藻類、豆類、干しエビ

ごま、小松菜、ブロッコリー

モロヘイヤ

ビタミンD(キノコ類、サケ、卵など)

クエン酸(梅ぼし、柑橘類、酢など)

禁酒禁煙も予防に重要なのでお願いします。低酸素状態を引き起こす睡眠時無呼吸症候群の治療を行う事も重要です。

妊婦・出産前後の歯科治療の注意事項について

気になること:
・レントゲン撮影は口にしか照射部位が無いため、安全ですが、気になる方は出産後でかまいません。
・局所麻酔も局所にしか作用が無いため安全です。
・ユニットの乗り降りや移動はゆっくりでかまいません。自分のペースでなさってください。
・妊婦が歯周病に罹患していると、低体重児出産早産のリスクが高まります。歯周病の人の早産と切迫早産のリスクは、健康な歯の人の約7.5倍も高いという結果が出ています。安心安全は出産を迎えるために、出産前に口腔環境を整えることは重要です。定期的に経過観察と歯石除去にいらしてください。早産のその他の原因であるタバコやアルコール、高齢出産とともに注意してください。低出生体重児や早産児は、妊娠37週以上で出生した児や2500g以上で出生した児に比べて発育や発達の遅れ、注意欠陥多動自閉症などの発達障害のリスクは高いといわれています。また、子宮内発育が順調であれば、たとえ早産であっても、子宮内での胎児発育が抑制された状態に比べてこれらのリスクは低いことが知られています。(参考図1は慶應大学の研究を参照)

ビタミンD摂取不足が、胎児の出生後のエナメル質形成不全や早期のむし歯のリスクとなりますので、十分摂取してください。ビタミンDを多く含む食材は魚、肉、卵、きのこです。野菜には含まれていません。
・歯科医院のフッ素塗布や歯磨き粉による過量のフッ化物についても、仮に母親が過量のフッ化物を一時的に摂取したとしても母親のフッ化物の血中濃度は上昇しますが、これに比較して胎児の血中濃度はほとんど上昇しません。母親と胎児は臍帯という細い血管で胎盤を通じて繋がっているだけだからです。この状態では、胎児のほうに母親からフッ化物が移行し始めても、まもなく母親の血中フッ化物濃度は下がってしまいます。また、母親が摂取するフッ化物はあまり母乳中に移行しません。

妊娠初期:妊娠2〜4ヶ月
つわりの時期です。口内環境が悪くなりやすい時期です。歯磨き自体が吐き気をもよおすもとになるため、十分に歯垢を落とし切れずに歯磨きを終えてしまいます。吐くことや酸性のものを好むようになることで、口内が酸性に傾いてしまうのも虫歯を作る原因となります。妊娠するとホルモンの変化で唾液の分泌が減り、口腔内の防御性能が低下し酸性になりやすくなります。その結果、虫歯や歯周病のリスクが高くなります。卵胞ホルモンエストロゲンや黄体ホルモンプロゲステロンの増加によって、妊娠性歯肉炎や妊娠性エプーリス(歯肉のできもの)を生じます。
①体調の良い時間帯に歯磨きをすると良いです。
②小さい歯ブラシで、奥から前に向かって磨きましょう。
③顔を下に向けたまま磨くと良いです。
④味の強いミント系歯磨き粉やデンタルリンスを使用しないようにします。
⑤フッ素・キシリトール・リカルデントを活用しましょう。

安定期:妊娠5~7ヶ月
歯科での処置が胎児にも影響が出にくい時期です。定期的に歯石除去にいらしてください。しかし、親知らずの抜歯など大きな外科処置は控えましょう。妊娠8ヶ月以降は胎児が大きくなり、高血圧や貧血になる可能性もあがり、母体に負担がかかる時期なので応急処置とし、出産後に改めて治療しましょう。仰向け姿勢は仰臥位低血圧症候群を起こすこともあります。発症したら左横向(左側臥位)になって、足を組み、右腰下にタオルを添えて数分様子をみます。楽な体勢で治療が受けられるよう座席を倒し過ぎないようにします。体調を崩した際は、すぐにトイレに行けるように声かけなどをします。