口腔がんの原因としては、主にタバコとお酒が挙げられています。他に、歯の鋭いところや合っていない入れ歯などによる物理的刺激などもあります。

口腔がんは進行すると、口の中から首のリンパ節に転移し、肺、肝臓、骨などへも転移します。逆に肺がんや腎臓がんなどが口腔内に転移することもあります。がんの中でも口腔がんは自分で直に見ることのできるがんです。そこで、セルフチェックのしかたをご紹介します。

明るい光の下で、鏡を使って、入れ歯があれば外して行ってください。
①唇の内側と下あごの歯ぐきを見て、触ってください。

②頭を後ろに傾けて、上あごの歯ぐきとその間を見て、触ってください。

③頬の裏側の粘膜を見て、触ってください。

④舌を前、横、上に動かして、舌背、舌の両わき、舌と歯ぐきの間、舌の下を良く見て、触って下さい。

ここまでで、
白い斑点や赤い斑点はありませんか?
治りにくい口内炎や、出血しやすい傷はありませんか?
盛り上がったできものやかたくなったところはありませんか?
舌で例を挙げます。前がん病変とがんの画像です。

舌は口腔がんが最も発生しやすいところです。舌の下(口腔底)の口腔がんは発見しづらいです。
次に、
⑤下あごから首にかけて触って見て下さい。
顎の下と首のわきに腫れはありませんか?
特にオトガイ下リンパ節、顎下リンパ節、上内頸静脈リンパ節は転移しやすいです。
オトガイ下リンパ節の触診:

顎下リンパ節の触診:

上内頸静脈リンパ節の触診:

最後に
⑥食べたり飲んだりがスムーズにできますか?

口の中のできものや色がついたところを写真撮影してみて、2週間後無くなっていない、大きさが大きくなっている場合は要注意です。抜歯した後の治りが悪いのが2週間以上続くのも要注意です。歯科医院へ受診・相談してください。現在、ほとんどの口腔がんが歯科医院で見つかっています。

当院では、パノラマX線撮影、CT撮影細胞診・組織診を用いて、診断致します。細胞診・組織診は必要性や希望に応じて行います。口腔がんの疑いがあれば、速やかに専門医療機関へ紹介致します。

専門医療機関では、MRI、血管造影CT、PET、CTによる全身検索、消化管内視鏡検査などの撮影によって、精査して行く形になります。

口腔がんの治療は、手術、化学療法、放射線療法が基本となります。さらに最近では、分子標的薬の抗ヒトEGFRモノクローナル抗体アービタックス、免疫テェックポイント阻害薬(オプジーボ、キイトルーダ)や動脈注射化学療法陽子線治療重粒子線治療ホウ素中性子補足療法3Dモデルとシュミレーションによる顎骨再建ロボット手術、遺伝子パネル検査による抗がん剤の選択など進歩しています。

ステージが進んでしまうと、命を救うために手術で舌や顎の骨を切除しなければならなくなり、審美性を損なったり、食事や会話が不自由になり、嚥下リハビリテーションを行なったり、経胃栄養となることもあります。したがって、早期発見が最も大事となります。口腔がんの5年生存率が約50%と報告されています。早期癌(4cm未満)では80〜90%です。ぜひご自分で1ヶ月に一回口の中のセルフチェックをして見て下さい。何らかの病変、異常があれば、ご相談ください。保険診療において、初診または歯周病重症化予防・SPTなどの検診の際に口腔粘膜も診察させていただいております。