サルコペニアにより全身や嚥下(飲み込み)に関係する筋肉の量が減ると、嚥下障害(飲み込みの問題)を生じます。

サルコペニアsarcopeniaとは

歳をとる、あるいは病気によって筋肉量が減ることをサルコペニアと言います。サルコペニアになると、体を動かす力が低下して、転倒・骨折などを生じやすくなるだけでなく、閉じこもりやすくなり、死亡率も上がります。サルコペニアがわかると、介護が必要になる前に筋肉の低下を発見し、予防につなげられます。

疫学

70歳未満の高齢者で約20%、80歳以上のなると50%以上がサルコペニアを生じています。

原因

原発性:ホルモンの分泌が低下、脊髄のα運動ニューロン減少、筋衛星細胞減少があります。
二次性:廃用などの身体活動性低下や疾病、栄養低下に伴って起こります。

サルコペニアの診断

2 BMI:体重kg ÷ (身長m)2が21以下

3 75歳以上

これらが満たされると運動器疾患960人で調査したところ約80%の診断割合であったことを福島県立医大栗田宣明特任教授の研究で報告されています。希望があれば、東北大学病院の加齢・老年病科などにご紹介いたします。

サルコペニアの摂食嚥下障害の診断フローチャート

筋力:握力が男性26kg未満、女性18kg未満で評価します。
身体機能:歩行速度が0.8m/s以下で評価します。
筋肉量:骨密度計測に用いられるDXA法による四肢筋量を評価し、Skeletal Muscle Infection(SMI)=四肢筋量(kg)/身長^2として計算します。男性7.0未満、女性5.4未満で評価します。
下腿周囲長が在宅高齢者で男性34cm以下、女性33cm以下、入院高齢患者で男性30cm以下、女性29cm以下で評価します。
嚥下関連筋の筋力低下:舌圧が20mPa未満で評価します。

サルコペニアのリハビリテーション栄養

原因 対応
加齢 40歳以降、1年で0.5〜1%の筋肉量減少、地域在宅高齢者の約10%がサルコペニア、摂嚥下関連筋のサルコペニアは摂食嚥下障害を引き起こします。 全身のレジスタンストレーニングを行います。
嚥下関連筋のレジスタンストレーニングを含めた摂食嚥下リハビリテーションを行います。
栄養改善:たんぱく質・分岐鎖アミノ酸の摂取を励行します。
活動 ベッド上安静、閉じこもりがちの生活、病院でのとりあえず安静・禁食(医原性)が要因となります。 早期離床・早期経口摂取を行います。(予防、病院では入院後2日以内に行います。)
「とりあえず安静・禁食」を回避します。(予防)
栄養 エネルギーとたんぱく質の摂取不足、病院での不適切な栄養管理:とりあえず水電解質輸液のみ(医原性)が要因となります。 適切な栄養管理を行います。
エネルギー蓄積量を含む攻めの栄養管理を行います。
疾患 急性炎症・外傷による侵襲、悪液質(がん・慢性臓器不全・慢性炎症による体重減少と食欲不振)が原因となります。 原疾患の治療、栄養・運動・薬剤・心理など包括的対応を行います。

サルコペニアの嚥下障害のトレーニング

トレーニングは週3回を目安にしてください。体調や筋力向上に伴い、適宜回数やセット回数を変えても構いません

○舌圧の改善する方法があります。

ペコパンダを頑張って押しつぶせる硬さのものを5回3セット。

○舌骨上筋群の筋力を強化する方法があります。食道入り口部が開きやすくなります。

□ゴムボール顎引き抵抗運動:真っ直ぐに座るか立って、肩を軽く後ろに引きます。ボールを顎の下で挟んで、この姿勢を運動中は維持します。ボールに向かって可能な限り強く顎を引き続けます。持続時間は30秒キープ、これを3回。次に顎を引いたり、力を抜いたりを10回を3セット行います。適宜回数を変えても構いません。

◯誤嚥したものの排出を強化するトレーングがあります。呼吸訓練です。

□ピロピロ笛:大きく腹式呼吸を行い、笛を口に加え、一気に吹き伸ばします。吹き伸ばしたまま5〜10秒程度、巻き戻らない程度の最小呼吸で吹き続けます。最後に笛を巻き戻して終了です。この一連の動作を1回とします。10回2セット行います。

○食道の機能改善する方法があります。薬が残ったり、逆流したりする場合に行います。

□ブリッジ嚥下訓練:ブリッジ姿勢で空嚥下を10回行います。

○サルコペニアを改善をする方法があります。まず、タンパク質を十分に摂取しましょう。

□スクワット:10回3セット行います。

下記の資料をダウンロードしてお使いください。

サルコペニア嚥下障害のトレーニング Ver.2

引用

日本摂食嚥下リハビリテーション学会ホームページ