お子さまの「お口の機能」、育っていますか?

「小児口腔機能発達不全症」とは、18歳未満(赤ちゃんから高校生まで)のお子さまを対象に、お口の正しい発達をサポートする診断です。
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食べるのが遅い、うまく飲み込めない
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発音がはっきりしない
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いつもお口が「ぽかん」と開いている(口呼吸)
こうしたサインを見つけ出し、改善することで、きれいな歯並びや正しいかみ合わせへと導きます。さらに、お口を整えることは、将来の全身の健康や、学習に大切な認知機能の発達を守ることにもつながります。
実は、80歳で20本の歯を残している「8020達成者」には、受け口や前歯が閉じない噛み合わせの方はほとんどいません。お子さまの健やかな未来のために、今から「一生使えるお口」を育てていきましょう。
お子さまのお口の成長チェックカレンダー
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生後5ヶ月頃:離乳食スタートのサイン
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スプーンなどを舌で押し出す反射がなくなり、食べ物を受け入れられるようになります。
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1歳半頃:奥歯でカミカミ・離乳の完了
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奥歯(第一乳臼歯)が生え、食べ物をすりつぶせるようになります。「マンマ」など意味のある言葉も増えてきます。
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2歳頃:お口を閉じてモグモグ
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唇をしっかり閉じて食事をすることができるようになります。
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3歳頃:乳歯がすべて生え揃う
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前歯で噛み切り、奥歯ですりつぶす動きが完成します。スプーンなど道具を使い、一口の量を自分で調節できるようになります。
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4歳頃:うがいと舌のトレーニング
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「ぶくぶくうがい」ができるようになります。指しゃぶりを卒業し、舌で上唇をなめるなど、複雑な動きもできるようになります。
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5歳頃:お口の動きの完成
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正しい発音や、食べるための基本的なお口の動きが完成します。
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6歳頃:大人の歯(6歳臼歯)の登場
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初めての永久歯が生えてきます。しっかりとした「ぶくぶくうがい」で、お口を清潔に保つ習慣を。
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12歳頃:お口と喉の大きな変化
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成長に伴い、アデノイド(鼻の奥)や扁桃腺が肥大しやすく、呼吸の状態に注意が必要な時期です。
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「口呼吸(くちこきゅう)」にお心当たりはありませんか?
本来、人間は鼻で呼吸をするのが自然な状態です。しかし、鼻呼吸がうまくできなかったり、習慣的に口で呼吸をしてしまったりすることを「口呼吸」と呼びます。
実は、子どもの約3割(3人に1人)が口呼吸をしていると言われています。
口呼吸が引き起こす「お口のトラブル」
お口で呼吸をする習慣がつくと、食べる力に以下のような悪影響が出ることがあります。
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クチャクチャと音を立てて食べる
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食べこぼしが多い
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飲み物で流し込むように食べる
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誤嚥(ごえん): 食べ物が誤って気管に入ってしまう
うちの子は大丈夫?チェックリスト
お子さまにこんな様子はありませんか?これらは口呼吸のサインかもしれません。

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鼻の穴によく手を触れる(鼻が詰まっているサイン)
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会話中によく聞き返す(耳の聞こえに影響が出ている可能性)
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お口が乾きやすい
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唇に締まりがない(いつもポカンと開いている)
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食べ物をよくこぼす
受診前アンケートと診断の流れ
当院では、お子さまの成長に合わせて「離乳の完了前」と「完了後」の2つの段階に分けてチェックを行います。
「離乳の完了」とは? 「ミルクや母乳を卒業したこと」だけを指すのではありません。
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形のある食べ物を、自分の歯(または歯ぐき)でカミカミしてつぶせる。
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栄養の大部分を、ミルクではなく食事からとれるようになった。 この2つが揃った状態を「離乳の完了」といいます。
診断とサポートの流れ
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検査: アンケートと専用の医療機器による検査を行い、お口の状態を詳しく診断します。
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指導・トレーニング: 診断結果に基づき、お口の機能を育てる訓練やアドバイスを行います。
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安心のサポート: アドバイス内容は**「指導書」として書面でお渡し**しますので、ご自宅でもゆっくり見直していただけます。
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専門連携: より高度な治療が必要と判断した場合は、速やかに専門の医療機関をご紹介いたします。
こちらの用紙を印刷してお使いください。記入していただければ、窓口で受け取らせていただきます。
当院での指導・治療、および専門病院へのご紹介例
お子さまの気になるクセや症状に合わせて、適切なサポートを行います。

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指しゃぶり(親指を吸う癖)
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対応: 4歳頃までの卒業を目指して指導します。
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理由: 続けていると、出っ歯(上顎前突)や、前歯が噛み合わない状態(開咬)になりやすいためです。
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飲み込むときに舌を出す癖
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対応: お口のトレーニング(機能訓練)で正しい動きを身につけます。
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理由: 舌で前歯を押す癖は、歯並びがガタガタになる原因になるためです。
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舌の裏のヒモが短い(舌小帯強直症)
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対応: 当院にて「舌小帯切除術」という簡単な手術や、その後のトレーニングを行います。
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お鼻やのどのトラブル(鼻づまり・いびき・扁桃腺の肥大など)
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対応: 提携先の耳鼻咽喉科をご紹介します。
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理由: 鼻づまりや喉の腫れは「口呼吸」の根本的な原因となることがあり、耳鼻科との連携が不可欠です。
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「お口を閉じる力」を測定する検査(口唇閉鎖力測定)
「いつもお口がポカンと開いている」 「食べる時にペチャペチャ音がする」 それは、お口を閉じる力が弱くなっているサインかもしれません。当院では、専用の測定器を使って、お子さまのお口の力を数値でチェックしています。
どんな検査? ボタンのようなパーツを唇にくわえ、優しく引っ張ることで「お口を閉じる力」を測ります。痛みはなく、ゲーム感覚で楽しく受けられる検査です。
診断のポイント 測定した数値は、同じ年齢・性別のお子さまの平均値と比較します。 平均よりも値が低く、ふとした時にお口が開いていたり、口呼吸のクセがあったりする場合、「口唇閉鎖不全(ぽかん口)」と診断し、お口の力を育てるトレーニングをご提案します。

保険診療では3ヶ月に1回測定することができます。
「ベロ(舌)の力」を測る検査(舌圧測定)
食べ物を上手に飲み込んだり、はっきりとおしゃべりしたりするためには、ベロの力がとても大切です。 当院では、ベロの力が十分に育っているかどうかを、専用の機械で測定しています。
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どんな検査?: 小さな風船のようなものをベロでグッと押しつぶすだけの、簡単な検査です。
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わかること: ベロを動かす力の強さが数値でわかります。力が足りない場合は、お口の機能を育てるトレーニングを一緒に進めていきましょう。

保険診療では3ヶ月に1回測定することができます。
お口の育ち:食べる・飲み込む力の「8段階ステップ」
「摂食(せっしょく)=食べること」「嚥下(えんげ)=飲み込むこと」の機能は、ただ年齢が上がれば身につくものではなく、一段ずつ階段を登るように発達します。
発達の特徴を順番にご紹介します。
ステップ1:食べるための準備期間(生後1〜4ヶ月頃)
まだ離乳食を始める前ですが、実は将来「食べる」ために必要なお口の基礎を作っている、とても大切な時期です。
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本能でミルクを飲む「吸い付く力」 この時期の赤ちゃんは、生まれつき備わっている反射(吸てつ反射など)を使って、一生懸命ミルクを飲みます。
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お口の感覚を育てる「おもちゃなめ」 指しゃぶりをしたり、おもちゃをペロペロなめたりするのは、遊びではなくお口の中の感覚を学習する大切なお勉強です。「これは固いかな?」「これはどんな形かな?」と確認しながら、食べる準備をしています。
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ベロがちょっぴり出ているのは自然なこと リラックスしている時にベロが少しお口の外に出ていることがありますが、この時期特有の自然な姿です。
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飲み込み方は「乳首スタイル」 水分補給は、おっぱいを力強く吸い込み、そのままゴックンと飲み込む動き(哺乳運動)が中心です。
「お口の発達」に心配があるとき、見られるサイン
お口の機能が順調に育っていない場合、食事の時間に以下のような様子が見られることがあります。これらは「育て方」のせいではなく、お口の機能の未発達(感覚の過敏や反射の影響)が原因かもしれません。
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食べることへの拒否(拒食・摂食拒否)
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食べ物を見るだけで嫌がったり、口を開けようとしなかったりします。
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お口の感覚が敏感(過敏)
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特定の食感(ドロドロしたもの、ツブツブしたものなど)をひどく嫌がったり、お口の中に指やスプーンが入るだけで「オエッ」となったりします。
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よく「むせる・咳き込む」(誤嚥のリスク)
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飲み込みがうまくいかず、食べ物や水分が変なところ(気管)に入りそうになってしまい、激しくむせたり、食後にコンコンと咳き込んだりします。
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赤ちゃん特有の反射が残っている(原始反射の残存)
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本来なら卒業しているはずの「舌で食べ物を押し出してしまう反射」などが残っていて、形のある食べ物をうまく取り込めない状態です。
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ステップ2:ゴックン!と飲み込む練習期(生後5〜6ヶ月頃)
いよいよ離乳食が始まる時期です。おっぱいを「吸う」ことから、食べ物を「飲み込む」ことへと、お口の使い方が大きく進化します。
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「飲み込む(嚥下)」をマスターする お口に入ってきたものを、上手に喉の奥へ送り込んで飲み込めるようになる大切な時期です。
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下唇に注目!「スプーンを挟む動き」 食べ物を取り込むとき、下唇を内側にキュッと巻き込むような動きが見られるのがこの時期の特徴です。これは、スプーンの上の食べ物を上手にお口の中へ取り込もうとしている証拠です。
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ベロはまだ「前後」にしか動きません この時期のベロは、まだ前後(前だし・引っ込め)の動きが中心です。そのため、食べ物はさらさらした液体や、ポタージュのように滑らかにすりつぶした状態のものが適しています。
「飲み込む力」の発達がゆっくりな時のサイン
この時期(5〜6ヶ月頃)、お口の機能がうまく発達していないと、食事中に以下のような様子が見られることがあります。
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よく「むせる」・激しく咳き込む 食べ物や水分が、喉の変なところ(気管)に入りそうになっているサインです。
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ベロを突き出して飲み込む(乳児嚥下・逆嚥下) 離乳食が始まっても、おっぱいを飲む時のように「舌を前に突き出す動き」が続いている状態です。食べ物を奥へ上手に送れず、お口の外に押し出してしまうこともあります。
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食べ物をうまくまとめられない(食塊形成不全) お口の中で食べ物をひとまとめの「かたまり」にすることができず、バラバラのまま飲み込もうとしてしまいます。
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よだれが多い お口をしっかり閉じられなかったり、お口の中に溜まった唾液を上手に飲み込めなかったりすると、よだれとして出てしまいます。
💡 先生からのアドバイス
「食べさせ方が悪いのかな?」と自分を責める必要はありません。これらは「お口の筋肉の使い方」を練習中、あるいは発達のステップが一段飛ばしになっているだけかもしれません。
「飲み込みにくそうだな」と感じたら、まずは食べ物の柔らかさを一段階戻してみたり、スプーンの乗せ方を変えたりするだけで改善することもあります。心配な時は、いつでもご相談くださいね。
ステップ3:食べ物を上手にお口に「とり込む」練習期(生後5〜6ヶ月頃)
この時期は、ただお口を開けるだけでなく、自分の唇を使って食べ物を上手にとり込む練習が始まります。
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上唇が活躍!自分から唇を閉じて食べる スプーンがお口に触れると、自分から唇を閉じて食べ物を取り込めるようになります。特に、上唇を使ってスプーンの上の食べ物を上手にとらえる動きが見られるようになります。
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「一口の量」を覚える スプーンから入ってくる食べ物を、自分に合った量だけ取り込むコントロールが少しずつできるようになります。
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さらさらの水分はまだちょっと苦手 この時期は、まだあごの動きが安定していません。これまで「おっぱい(乳首)」をくわえて支えにして飲み込んでいたため、支えがない状態でゴクンと飲み込むことに慣れていないのです。そのため、さらさらしたお水などは、上手に飲めずに出してしまったり、むせたりすることがあります。
「食べ方」の練習がうまくいっていない時のサイン
離乳食を始めたばかりの時期に、以下のような様子がよく見られる場合は、唇やベロを動かす筋肉がまだ十分に育っていない可能性があります。
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お口から食べ物がこぼれる(唇からのもれ)
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食べ物を取り込んだ後、唇をぴたっと閉じられないため、お口の端から食べ物が漏れ出てしまいます。
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お口を必要以上に大きく開けすぎる
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スプーンを迎えに行くときに、あごを大きく下げすぎてしまう状態です。唇で食べ物を「とらえる」準備ができていないサインかもしれません。
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ベロを出して食べ物を押し出してしまう(舌の突出)
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飲み込もうとするときに、ベロが前へ出てしまいます。せっかく入れた食べ物をベロで外へ出してしまうこともあります。
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スプーンを「ガチッ」と噛んでしまう
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唇で食べ物をしごき取るのではなく、あごの力(噛む動き)でスプーンを挟もうとしてしまいます。
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💡 解決のためのアドバイス
これらは、赤ちゃんが「お口の新しい使い方」を一生懸命練習している証拠でもあります。
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スプーンを置く位置: 下唇の上にそっと乗せ、お子さまが自分から上唇を降ろしてくるのを待ってあげましょう。
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あげる量: 一口の量が多くなりすぎていないか確認してみてください。
「なかなか上手にならないな」と不安な時は、お気軽にご相談ください。お口の筋肉を育てるための、ちょっとしたコツをお伝えします。
ステップ4:ベロで「押しつぶす」練習期(生後7〜8ヶ月頃)
離乳食の中期、いわゆる「モグモグ期」です。唇を閉じて食べられるようになると、ベロの動きが劇的に進化します。
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ベロが「上下」に動くようになる 唇をしっかり閉じることで、ベロがお口の外へ出られなくなります。すると、ベロは行き場を求めて「上下」に動くようになり、食べ物を上あごに押しつけてつぶせるようになります。
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お口の角をキュッと引いて「モグモグ」 まだあごは上下にしか動かせません。そのため、力強くつぶそうとするとき、お口の両端(口角)が左右均等に「イー」とするように引かれます。これが、一生懸命モグモグしているサインです。
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食べられるもの お豆腐くらいの、舌で簡単に押しつぶせる柔らかさのものが目安です。
⚠️ 「発達のつまずき」サインをチェック!
この時期、以下のような様子が見られる場合は、まだベロの力が十分に育っていないかもしれません。
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柔らかいものでも「丸飲み」してしまう ベロでつぶさずに、そのまま飲み込んでしまう。
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ベロを前に出してしまう まだ「おっぱいを吸う動き」が残っていて、食べ物をベロで押し出してしまう。
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食べ物がバラバラのまま(食塊形成不全) 唾液とうまく混ぜ合わせることができず、飲み込みやすい「ひとまとまり」の状態を作れない。
💡 親御さんへのアドバイス
もし丸飲みをしているようなら、食べ物の固さが合っていないか、一口の量が多すぎるのかもしれません。焦らずに、「モグモグ」と口角が動いているか観察しながら、お子さまのペースに合わせて進めていきましょう。
ステップ5:奥歯のあたりで「すりつぶす」練習期(生後9〜11ヶ月頃)
離乳後期、いわゆる「カミカミ期」です。食べ物の形がしっかりしてくるのに合わせ、ベロでつぶすだけでなく、あごを上手に使った「すりつぶし」が始まります。
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ベロだけでは足りない!あごの力の出番 食べ物が少しずつ硬くなる(バナナや肉団子くらいの硬さ)につれて、ベロと上あごだけで押しつぶすのが難しくなります。すると、赤ちゃんは自然と食べ物を「奥」へと運ぶようになります。
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「歯ぐき」を使ってすりつぶす まだ奥歯が生え揃っていない時期ですが、奥歯が生えてくる場所の「土手(歯ぐき)」を使い、上あごと下あごをすり合わせるようにして食べ物を細かくします。
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お口が「左右」に動くのがポイント! これまでのステップではお口が「上下」に動いていましたが、この時期は左右バラバラに動くようになります。食べ物を片側の奥に寄せて噛むため、お口の角(口角)が左右非対称に動くのが、上手にすりつぶせている証拠です。
💡 親御さんへのアドバイス
お口をモグモグさせているときに、あごが少し左右に揺れたり、お口の形が左右で違って見えたりするのは、正しい「すりつぶし」ができているサインです。
もし、ずっと上下にしか動かさず丸飲みしているようなら、まだ「押しつぶし」の段階かもしれません。少し柔らかいものに戻して、あごの動きを促してあげましょう。
ステップ6:自食準備期 生後1歳〜1歳半
歯がため遊び、手づかみ遊びといった指先や前歯を使った遊びが盛んになります。手と口の協調運動が開始されます。
💡 親御さんへのアドバイス
「手づかみ食べ」は周りが汚れてしまい大変な時期ですが、実はお子さまの脳とお口の発達に欠かせないプロセスです。
前歯でしっかり「かじり取る」経験を積むことで、一口の量を学習し、丸飲みの防止にもつながります。スティック状の野菜など、手づかみしやすいメニューを取り入れて、思う存分練習させてあげましょう。
ステップ7:手を使って「お口へ運ぶ」練習期(離乳完了期・初期)
いよいよ自分の手を使って食べ物を運ぶ「手づかみ食べ」が本格的になります。これは単なる食事の動作ではなく、全身のバランス感覚と指先の器用さがつながる、高度な発達のプロセスです。
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自分の手がお箸代わり 手指を上手に使って、食べ物をしっかりつかみ、正確にお口の中へ運ぶようになります。
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姿勢が安定すると、お口へのコントロールが向上する この時期、赤ちゃんは座る姿勢(体幹)がしっかりしてきます。体がグラつかずに安定することで、腕を自由に動かせるようになり、食べ物をお口までスムーズに運べるようになるのです。
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「お口の真ん中」へ運べるように 最初は少しぎこちない動きですが、次第にお口の前方から「唇の中央」をめがけて、まっすぐ食べ物を運べるように発達していきます。
💡 親御さんへのアドバイス
「お口の真ん中に運ぶ」という動作は、食べ物をこぼさず、効率よくモグモグするためにとても重要です。
もし、食べ物を口の端に入れてしまったり、うまく運べなかったりする場合は、「足がしっかり床についているか」など、座る姿勢を見直してあげると、手の動きがグンと安定することがありますよ。
ステップ8:道具を使いこなす「食具(しょくぐ)マスター期」(離乳完了〜6歳頃)
手づかみ食べで「一口の量」を覚えた後は、道具を使って食べる練習が始まります。一気にできるようになるのではなく、お子さまの運動機能の発達に合わせて少しずつスキルアップしていきます。
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道具のステップアップ
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手づかみ食べ: 手でつかんで食べる(すべての基礎)
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スプーン・フォーク: 「すくう」「刺す」動きを覚える
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お箸: 指先の細かな動きでお箸を操る
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お箸の完成は「6歳頃」が目安 お箸を正しく使うには、非常に高度な指先のコントロールが必要です。一般的に、無理なくスムーズに使いこなせるようになるのは、小学校へ上がる前の6歳頃と言われています。
💡 親御さんへのアドバイス
「早くお箸を使わせなきゃ」と焦る必要はありません。
スプーンを正しく持つ(グー持ちから鉛筆持ちへ)などのステップを一つずつ踏むことで、自然とお箸を扱うための指の筋肉が育ちます。 また、「正しい姿勢で座ること」や「しっかり噛むこと」ができて初めて、道具を上手に使う余裕が生まれます。まずは楽しく、美味しく食べる時間を大切にしましょう。
健やかなお口を育てる「授乳」のポイント
健やかな背長は「授乳」から!(ダウンロードしてお使いください。)
授乳は単に栄養を摂るだけでなく、将来の歯並びやかみ合わせ、正しい呼吸(鼻呼吸)を身につけるための「お口の最初のトレーニング」です。
1. 深くくわえて、一生懸命「吸う」ことが大切
おっぱいを飲むとき、赤ちゃんはベロを上手に使って圧力をかけ、母乳を吸い出します。
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メリット: この動きが、あごの骨の成長を促し、ベロを正しい位置へと導きます。
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ポイント: 乳首を浅くではなく、しっかり深くお口に含ませてあげましょう。

2. 哺乳瓶(人工乳首)の選び方
哺乳瓶の中には、傾けるだけでミルクが出てくるタイプもあります。しかし、楽に飲めすぎると、赤ちゃんは出てきすぎるミルクを止めようとして、ベロを前に突き出す悪い癖(舌突出癖)がついてしまうことがあります。
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リスク: 悪い癖がつくと、将来的に前歯が噛み合わない「開咬(かいこう)」の原因になることも。
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選び方: おっぱいを飲むときと同じように、**しっかり吸う力が必要なタイプ(母乳に近い設計のもの)**を選んであげましょう。
3. 赤ちゃんがリラックスできる「まるい姿勢」
赤ちゃんの背骨は、アルファベットの「C」のようなカーブを描いています。
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授乳の姿勢: 背中を無理に伸ばさず、背中が少し丸くなるように抱っこしてあげると、赤ちゃんは安定します。
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頭の位置: 頭が後ろにのけぞってしまうと、お口が開いて「口呼吸」になりやすくなります。しっかり頭を支え、丸く抱きかかえてあげましょう。
4. 「添い乳」や「寝かしつけ授乳」に注意
夜間の「添い寝での授乳(添い乳)」は、お母さんには楽ですが、赤ちゃんにとっては少しリスクがあります。
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体のゆがみ: いつも同じ方向を向いて寝ながら飲むと、あごの成長が左右でズレてしまう(交叉咬合)原因になります。
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むし歯のリスク: お口の中にミルクが溜まったまま寝てしまうと、片側だけむし歯になりやすくなります。
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理想は: できるだけお母さんは体を起こした状態で、左右バランスよく授乳してあげましょう。

💡 メッセージ
毎日の授乳は大変なことですが、この時期のちょっとした工夫が、お子さまの「一生の宝物」であるきれいな歯並びと健康な体を作ります。
「どの哺乳瓶がいいの?」「授乳の姿勢、これで合ってる?」など、不安なことがあればいつでもご相談ください。歯科の立場から、お子さまの成長をサポートします。
一生おいしく食べるための「離乳食と・お口の育て方」
離乳食は単に栄養を摂るだけでなく、「正しく噛み、正しく飲み込む力」を育てる大切なトレーニング期間です。お子さまのペースに合わせて進めていきましょう。
1. 離乳食を始める目安(生後5〜6ヶ月頃)
月齢だけでなく、お子さまのサインをチェックしましょう。
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首がすわり、寝返りができる
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5秒以上座っていられる
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食べ物に興味を示し、スプーンを舌で押し返さなくなった
2. 【時期別】お口を育てる進め方
■ 離乳初期(5~6ヶ月頃):唇で取り込む練習
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目標: 唇を閉じて、自分から取り込むこと。
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食べ物: 完全なペースト状(ヨーグルト状)。
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ポイント: スプーンを下唇に乗せ、お子さまが自らお口を閉じるのを待ちます。ベロを上あごに押し付けて飲み込む「大人の飲み込み方」の基礎を作ります。
■ 離乳中期(7~8ヶ月頃):舌でつぶす練習
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目標: 舌を上あごに押し当てて食べ物をつぶすこと。
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食べ物: 豆腐やプリンくらいの、指で簡単につぶれる固さ。
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回数: 1日2回。母乳やミルクは食後に。
■ 離乳後期(9~11ヶ月頃):歯ぐきで噛む練習
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目標: 左右の歯ぐきを使い、すりつぶして食べること。
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食べ物: バナナや柔らかい煮物など、指でつぶせる固さ。
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回数: 1日3回。
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チェック!: 噛んでいる側のお口の角(口角)がキュッと引かれ、左右非対称にお口が動いているか見てあげてください。
3. 1歳を過ぎたら:前歯で「かじり取り」と「手づかみ」
1歳頃に奥歯が生えてきたら、「手づかみ食べ」の機会を増やしましょう。
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前歯の役割: 大きな食べ物を前歯で「かじり取る」ことで、一口の量を覚え、唇の力も鍛えられます。これは将来のきれいな歯並びや、正しいあごの成長(出っ歯の予防など)に直結します。
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手と口の連携: 食べ物を触ったり、つぶしたり、なめたりする遊びは、指先とお口の感覚を育てる重要なステップです。
4. 離乳の完了目安(1歳半頃)
1歳半頃を目標に、母乳やミルクを卒業(離乳)することをおすすめしています。
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理由1: ダラダラと授乳が続くと、むし歯のリスクが急激に高まります。
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理由2: 赤ちゃん特有の「ベロを突き出す飲み込み方」が抜けにくくなり、歯並びに影響が出ることがあります。
⚠️ こんなときは歯科医院へご相談ください
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うまく噛めていない・丸飲みしている: もしかしたら「むし歯の痛み」で噛めないのかもしれません。
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ベロが低い位置にある: 正しくすりつぶしができていないと、ベロの筋肉が育たず、あごの成長が遅れたり、歯並びが狭くなったりする原因になります。
ワンポイントアドバイス 前歯でお肉や野菜を「かじり取る」動きは、あごを正しく成長させるための最高のリハビリです。もし「噛むのを嫌がる」「食べ方が気になる」という場合は、お気軽にご相談ください。
離乳完了前のお悩み解決ガイド:お口の機能と食べ方のポイント
離乳食ガイド(ダウンロードしてお使いください。)
離乳食を進める中で直面する「食べ方」や「お口の癖」の多くは、お口の機能が育っている途中のサインです。お悩み別にアドバイスをまとめました。
1. 食べ方・飲み込み方のお悩み
| お悩み | 原因とアドバイス |
| お口を開けたまま食べる | 鼻が詰まっていないか確認しましょう。普段から口が開いている場合は、お口周りの筋肉(口輪筋)を鍛えるトレーニングが効果的です。 |
| ベロが出る・ペチャペチャ音がする | 1歳を過ぎても授乳回数が多いと、この動きが残ることがあります。卒乳を検討するか、ベロの筋肉を刺激する運動を取り入れましょう。 |
| よく「むせる」 | 一口量が多い、あまり噛んでいない、口を開けて飲み込んでいる可能性があります。改善しない場合は、専門的な飲み込みの検査(VF検査など)が必要なこともあります。 |
| 噛まずに丸呑みする・早食い | 奥歯が生えていない時期は、歯ぐきでつぶせる固さか確認しましょう。また、きょうだいと競うなど「急いで食べなければならない環境」がないかも見直してください。 |
| お口に溜めて飲み込まない | 食べ物が固すぎる、または発達に対して難しすぎる可能性があります。無理やり食べさせるなどの心理的ストレスがないかも注意してあげてください。 |
| お肉やパサつくものが苦手 | 奥歯の生え方や噛み合わせを確認しましょう。線維質の多いお肉などは、お子さまの機能に合わせた調理法(細かく切る、とろみをつける等)に調整します。 |
2. お口の癖・発達のサイン
■ 指しゃぶり・おもちゃ舐め
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生後6ヶ月まで: 指しゃぶりは積極的にさせてあげましょう。赤ちゃん特有の反射を消し、お口の機能を育てる大切なステップです。
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6ヶ月以降: 歯並びへの影響を考え、指しゃぶりから「おしゃぶり」への切り替えを検討しましょう。
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おもちゃや毛布を舐める: お口への刺激になり、「大人の飲み込み方」への移行をスムーズにします。歯がためグッズも効果的です。
■ 食べこぼし・よだれ
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食べこぼし: 唇を閉じる力が弱い場合はトレーニングが必要ですが、手とお口の連携がうまくいかないことによる食べこぼしはこの時期「自然なこと」です。
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よだれが多い: この時期の乳幼児にとって、よだれが多いことは問題ありません。成長とともに落ち着くので、様子を見ましょう。
3. お口周りの過敏(触られるのを嫌がるなど)
お口の周りが敏感なお子さまには、大人の手のひらや指で、**「じわ〜っとしっかり圧迫するように」**触れてあげてください。軽い刺激よりも、安定した圧迫感がある方がお子さまは安心し、過敏が落ち着きやすくなります。
💡 歯科医師からのアドバイス:食形態の目安
奥歯(乳臼歯)が生えるまでは、「歯ぐきの土手(歯槽堤)」でつぶせる固さを守ることが大切です。
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噛まない・飲み込めない時: 一旦、食形態(固さや大きさ)を一段階柔らかいものに戻して、自信をつけてあげましょう。
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トレーニング: 当院では、お口の筋肉を正しく使うための簡単な運動訓練も指導しています。
離乳食期の「困った!」解決ガイド
お子様の「食べる力」を育てるアドバイス集(ダウンロードをしてお使いください。)
離乳食完了前によくある「食べ方・食欲」のお悩みと、お口の発達を守るためのアドバイスをまとめました。
1. 「食べ方・道具」のステップアップ
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手づかみ食べをしない・嫌がる
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原因: 「汚してほしくない」という周囲の視線を感じ取っていたり、手の感覚が敏感だったりする場合があります。
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アドバイス: 手づかみ食べは、自分の「一口の量」を覚える大切なトレーニングです。汚れても良い環境を作って、積極的にさせてあげましょう。手が汚れるのを極端に嫌がる場合は、砂遊びなどの「感覚遊び」から慣らしていくのも手です。
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スプーンやフォークを使いたがらない
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原因: 大人が食べさせた方が早くて綺麗なので、練習の機会を逃しているかもしれません。
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アドバイス: 道具にも順番があります。まずは**「手づかみ」→「スプーン」→「フォーク」**の順で、焦らずステップアップしましょう。
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自分で食べようとしない
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アドバイス: 周囲への「甘え」が出ている時期かもしれません。少しずつ「自分でできたね!」と自立を促すような声掛けを大切にしましょう。
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2. 「飲み方」の大切なルール
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コップやストローで飲めない
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⚠️ 実はストローに注意!: 早すぎる時期からのストロー使用は、ベロを突き出す「赤ちゃん特有の飲み方(乳児嚥下)」を長引かせてしまい、将来の歯並びや発音に影響することがあります。
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アドバイス: ストローの使用は3歳以降が理想的です。まずは7ヶ月頃から「コップ飲み」の練習を始めましょう。最初はスプーンで「すすり飲み」の練習をすると、1〜2ヶ月で上手に飲めるようになります。
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3. 「食欲・好き嫌い」の悩み
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食べることに興味がない・小食
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アドバイス: 食事の合間にジュースやミルク、おやつを与えすぎていませんか?「お腹が空くリズム」を整えてあげましょう。生活リズムが不規則な場合は、そこから見直すのが近道です。
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好き嫌いが激しい・偏食
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アドバイス: 「食感」に敏感なタイプの子もいます。無理強いはせず、楽しい雰囲気作りを。ただし、栄養状態に影響が出るほど偏っている場合は、小児科への相談も検討しましょう。
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ミルクばかりで離乳食を食べない
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アドバイス: 母乳やミルクの味が一番安心している状態です。味覚や感覚が過敏な場合もあります。鉄分不足(鉄欠乏)などの栄養バランスも影響するため、気になる場合は専門機関へ相談しましょう。
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4. 「気になる行動」のサイン
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食べ物を吐き出す
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アドバイス: 「固さが合っていない」ことがほとんどです。機能に合わせた固さに調整しましょう。もし体調が悪そうな場合は、胃腸の病気の可能性もあるので小児科を受診してください。
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口の周りに触れるのを嫌がる
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アドバイス: 感覚が過敏になっているかもしれません。大人の手のひらで、「じわ〜っと優しく圧迫するように」触れてあげると、赤ちゃんは安心し、過敏さが落ち着きやすくなります。
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💡 まとめ:お口の機能は「遊び」から育つ おもちゃや毛布をなめるのは、お口の感覚を鍛え、飲み込み方を「大人モード」へ切り替えるための大切な準備です。ぜひ、思う存分させてあげてください。
離乳食完了後の「食べ方・噛み方」お悩み解決ガイド
お子様のお口の育て方:食事のお悩み別アドバイス(ダウンロードしてお使いください。)
離乳食が終わっても、お口の機能はまだ発達の途中です。「うまく噛めない」「くちゃくちゃ食べる」といったお悩みには、実はお口の筋肉や使い方のクセが隠れていることがあります。
1. 「噛む力」と「一口の量」のトレーニング
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咀嚼(そしゃく)時間が極端に長い・短い
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長すぎる場合: ベロがうまく使えていないかもしれません。
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短すぎる(丸飲み)場合: 食べ物の固さが合っていないか、早食いのクセがあるかも。理想の回数は25〜30回です。
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前歯で「かじり取り」ができない
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なぜ大切?: 前歯は食べ物の固さや温度を感じ取る「高性能センサー」です。ここで情報をキャッチできないと、お口の中に詰め込みすぎてしまいます。
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アドバイス: 枝豆、とうもろこし、骨付きチキンなど、前歯を使うメニューを積極的に取り入れましょう。
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丸飲みしてしまう
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アドバイス: 自分で手に持って食べる「おにぎり」などは、一口の量を学習するのに最適です。また、奥歯に虫歯があると痛くて噛めないこともあるので、定期検診でチェックしましょう。
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2. お口の「閉じ方」と「飲み込み方」
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くちゃくちゃ食べる・お口からこぼれる
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原因: 「お口を閉じる力(口唇閉鎖力)」が弱かったり、鼻が詰まっていて口呼吸になっていたりする可能性があります。
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おうちでできる練習: * ぶくぶくうがいや、ゴム風船を膨らませる遊び。
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ストローの先(1〜1.5cm)だけをくわえて飲む練習。
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お風呂で鼻だけ出して「フンッ!」と息をする練習。
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麺類がすすれない
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アドバイス: すする動きは唇と鼻呼吸の連携が必要です。まずは冷たい麺や、スプーンに入れたスープを「ズズッ」とすする練習から始めましょう。
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3. 「好き嫌い」や「むら食い」との向き合い方
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口にためたまま飲み込まない
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アドバイス: 無理に食べさせようとすると逆効果になることも。食形態が合っているか、奥歯が生え揃っているかを再確認し、楽しい食事の雰囲気を優先しましょう。
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激しい好き嫌い・偏食
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原因: この時期は味覚だけでなく、見た目や食感(ザラザラ、ベチャベチャなど)にとても敏感です。
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アドバイス: レタスや小松菜などの「薄い葉物」は、実は大人以上に食べにくい食材です。無理強いして「緑色は嫌い!」という記憶にさせないよう、焦らず進めましょう。
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⚠️ 栄養状態に影響が出るほど極端な偏食がある場合は、小児科と連携してサポートいたします。
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💡 ワンポイントアドバイス
「一口の量」を覚えることは、一生の宝物です 詰め込みすぎや丸飲みを防ぐには、お子さま自身が「自分の口にはこれくらいがちょうどいい」と知ることが一番の近道。手づかみ食べやかじり取りは、そのための最高の授業です。
お口の癖や食べ方の悩みは、お気軽にご相談ください 当院では、単に歯を治すだけでなく、「一生おいしく食べられるお口」を育てるための機能訓練(MFT)やアドバイスを行っています。
引用
日本摂食嚥下リハビリテーション学会ホームページ
日本歯科医学会 口腔機能発達不全症に関する基本的な考え方
