歯周病は無症状で進行して、歯を支える骨を溶かしてしまい、歯がグラグラして抜けてしまう病気です。なぜ起こるのでしょうか?

体調や食事の変化生活習慣の乱れ抗菌薬などの薬、タバコ糖尿病免疫不全などによって、何らかのきっかけ(栄養、温度、p H、酸素量の変化などの周囲の環境変化)で、いつも口に住んでいる細菌の数が著しく減少したり、約1200種類といわれる住んでいる細菌の構成が変わってしまうこと、いつもは数が少ない細菌の種類が異常に増加するなどによって歯周病が生じると考えられています。腸内細菌でも同じように下痢、便秘、炎症性腸疾患、肥満、動脈硬化、肝がん、大腸がん、糖尿病、皮膚炎、免疫異常が発症していることも言われています。新たな細菌の参入によるものではないことが重要です。口腔内の細菌を完全に除去できないので、細菌の状態をいつもの状態に保つことが大事です。

歯周病菌の走査型電子顕微鏡SEM像です。

歯周病菌がいると、このような現象が起こりやすいので、歯周病菌を増えにくくするためにために細菌の住み家を壊したり、歯石を取ったり、ブラッシングをして出血しないようにすることが大切になります。出血によって細菌の環境が変わります(血液からのタンパク質供給、ヘモグロビンからの鉄分供給)ので、出血は歯周病の原因になります。そのために定期的に、歯科医院に通院して、回転する電動ブラシで歯や歯ぐきの掃除をしたり、超音波などで歯石を除いたりすることが大事です。日々のブラッシングはもっと大事になります。

いつも付き合っている細菌が歯周病を引き起こすため、ブラッシングや歯科医院への定期受診をすることで、口の中の細菌をいい状態にする(お手入れをする)ようなイメージでしょうか。

分子生物学が好きな方はご覧下さい。

毒素LPS(lipopolysaccharideリポ多糖)が微生物抗原を認識するToll様受容体(TLR)に認識され、そのシグナルは細胞内で伝達され、結果として炎症性サイトカインCytokineやケモカインChemokineは線維芽細胞やマクロファージなどの細胞を刺激して、そこから破骨細胞分化因子(RANKL)を分泌させます。前破骨細胞Preosteoclast(骨を吸収させる細胞に分化する前段階の細胞)上にある受容体とRANKLが結合すると、活性化した破骨細胞Osteoclastとなり、歯槽骨が吸収され、炎症反応がメタロプロテアーゼMMP(Matrix metalloproteinase)を産生することで、歯周組織のコラーゲンやプロテオグリカン、エラスチンなどの細胞外マトリックスを分解し、歯周病が進行します。

J Dent Res. 2010 Dec;89(12):1349-63. doi: 10.1177/0022034510376402. Epub 2010 Aug 25.Destructive and protective roles of cytokines in periodontitis: a re-appraisal from host defense and tissue destruction viewpoints.