顎義歯(あごの一部も補う入れ歯)

口唇口蓋裂,口腔癌術後(上顎がん摘出後など)の際に作られる入れ歯です。当院で製作致します。切除範囲が硬口蓋(歯の内側にある硬い上あご)だけの場合や軟口蓋(奥のやわらかい上あご)の前方部に及んでいる程度であれば、顎義歯の効果は非常に高く、装着時の患者様の満足度も非常に高いです。

切除範囲が軟口蓋におよび鼻咽腔閉鎖機能障害(鼻と口の通り道を塞ぐことができない、鼻に息が漏れ、食べ物が鼻に入る)を有している患者様では、症例によってはスピーチバルブや挙上子(リフト)が必要となります。軟口蓋を押し上げる(リフト)あるいは隙間を無くす(スピーチエイド)ことで、会話を明瞭にしたり,口から鼻へ食べ物が洩れるのを防ぎます。

舌接触補助床

PAP(Palatal Augmentation Prosthesis)とも呼びます。

舌・口底癌術後,慢性進行性麻痺,脳血管障害などによって舌の動きが悪くなっている患者に装着し,舌を口蓋に接触しやすくすることでしゃべったり飲み込んだりする機能を回復する装置です。当院で製作致します。

ホッツ床(哺乳床、Hotz床)

ホッツ床は哺乳床とも呼ばれ、口蓋裂の赤ちゃんの哺乳を補助するものです。当院でホッツ床を製作致します。例と治療経過を示す模型をお示しします。

生後可及的早期に使用開始したほうがよいです。口蓋形成術が行われる1歳6か月まで使用することが理想的で、十分な顎発育誘導効果が期待できます。嚥下(飲み込み)パターンが確立して舌が顎裂に入り込むことがなくなってくるE(乳歯の一番奥の歯)が萌えてくるまでの期間に使用することが理想的です。(顎裂が早期に消失してくる場合には早期の中止も考えます。)

装着後は、しばらく調整のために1-2週間に1回ほど来院して頂きます。中には嫌がるお子さんもおられますが、ほとんどのお子さんは2週間くらいで慣れてくれます。口が成長するにつれて、ホッツ床を舌で口の外に押し出すことがありますが,この場合は入れ歯用の安定剤でホッツ床をはずれにくくします。または、やわらかい材料をを少し顎裂に入れて維持をはかります。子供の成長に伴いホッツ床の適合が悪くなるので、その都度作り直します。1歳で平均4本の乳歯が萌出してくるので削合してHotz床は維持安定が不良となります。口蓋を閉じる手術が終わった後は,虫歯や歯並びの検診や予防で1-数ヶ月に1回定期的に受診して頂きます。

ホッツ床の効果

1.口蓋の破裂部を塞いで哺乳・食事を助けます。破裂部へ鼻腔内に陥入していた舌を本来の位置に戻します。口腔と鼻腔を機能的に分離します。鼻腔に異物が入らないようにします。
2.ゴム乳首による潰瘍の予防をします。
3.発音方法の獲得の補助となります。
4.顎の成長を誘導します。
5.吸綴圧の改善効果を高める。哺乳量が維持できる。

両親にご協力して頂いていること

1.哺乳状況の観察  離乳食に移行するまで続けてください。
2.ホッツ床の装着  一日中装着してください。
3.ホッツ床の消毒  沐浴時などで日に一度は消毒してください。
4.口の中の観察 口の中に傷ができていないかを確認してください。

NAM床(Nasoalveolar Molding Plate)

NAM床は、ホッツ床に付属装置をつけて手術までに鼻の形を整え、口蓋の顎裂の幅を縮小する効果を付与したものです。当院でNAM床を製作致します。例と治療経過を示す模型をお示しします。