下顎のインプラント総入れ歯

入れ歯ではうまくいかない下顎無歯顎の場合、マグネット入れ歯を製作することをお勧めします。下顎は歯がなくなるとあごの骨がやせやすいので、入れ歯がうまくいかなくなることが多いです。下顎無歯顎は前歯部2本のインプラントを埋入する方法があります。

海外の文献によると、下記の報告があります。

調査項目 インプラント総入れ歯と普通の総入れ歯の比較
主観的評価 患者満足度 インプラント総入れ歯の方がだいぶ良い
口腔関連QOL インプラント総入れ歯の方がだいぶ良い
全身健康QOL 有意差なし(統計学で調べて差がないこと)
客観的評価 咬合力、咀嚼能力 インプラント総入れ歯の方が良い
食品の嗜好の変化 有意差なし
栄養摂取状況 有意差なし
欠損部顎堤吸収の進行度 有意差なし

インプラントの周囲骨の吸収は抑制できる

さらに臼歯にも2本のインプラントを埋入するのが理想です。本数が埋入するほど入れ歯が食べやすくなります。最大6本までです。インプラントを埋入したところは、あごの骨が痩せにくくなります。

インプラントマグネット入れ歯

インプラントの上にマグネットのキーパーをつけ、入れ歯にマグネットをつけて磁力でくっつけます。前歯の骨量があれば低侵襲で短期間でインプラント埋入することができます。

インプラントに装着するマグネットのキーパーは三種類があります。Flatタイプは一番磁力が高く、Dome型は入れ歯の沈み込みに対応できます。Self-adjustingタイプは入れ歯が沈んでも入れ歯の磁石との位置ずれを小さくします

 

インプラント部分入れ歯

遊離端欠損症例(一番の奥の歯から臼歯が連続して何本か無い)では、咬むと沈み込んで調子が悪い場合、一番奥の歯の位置にインプラントを一本埋入し、マグネット義歯とすることができます。

ブリッジでは天然歯とインプラントを連結することができませんが、マグネット義歯の場合、天然歯とインプラントの上に製作することができます。

また、年齢を重ねて、上部構造(冠やブリッジ)のあるインプラントの周りの残存天然歯を失ったとき、インプラントにクラスプ(バネ)をかけた部分入れ歯を保険診療で製作することもできます。もちろんインプラントの上部構造(冠やブリッジ)を外して、マグネットのキーパーを装着し、マグネット義歯にすることもできます。

インプラント入れ歯のメリット

義歯が長持ちする。義歯の動きが小さいので食事しやすい。食生活や日常生活が向上する。介護者が管理しやすい。通常のインプラントより安い。唇のふくらみの形づくりがしやすい。希望に応じて、インプラントの埋入する数を増やすことができる。取り外しできるので、清掃しやすい。低侵襲・低リスク。インプラントを埋入した場所のあごの骨がやせない。固定性とほぼ同じ程度の満足感が得られる。インプラントを失っても、残ったインプラントが機能する。

インプラント入れ歯のデメリット

入れ歯が壊れやすい(入れ歯に金属の枠を入れて強度を上げます)。インプラントの周りが痛くなることがある、または、インプラントが脱落することがある(メインテナンスやインプラント周囲の入れ歯の調節が重要です)。

インプラント入れ歯の価格

インプラントマグネット義歯の場合、磁性体アタッチメントをつけた一本目のインプラント植立は合計23万円となります。二本目からは21万円ずつ加算されます。

義歯は自費の総入れ歯になります。インプラント部が破折しやすいため、メタルフレームによる補強構造が必要となるからです。価格は20万円程度となります。

デジタル診断料は2万円(税抜き)です。CTと印象から行うパソコンによるシュミレーションを行った場合発生します。キャンセルや紹介となる場合も発生します。インプラント埋入する場合は金額に含まれます。

当院ではインプラント体五年保証致します。株式会社ガイドデントの保証サービス(インプラント1本あたり2万円(税込+手数料込))を利用していただければ、10年間保証致します(インプラント体20万円)。

インプラントを除去しなければならない場合が生じれば、保険適応のインプラント除去術があります。
インプラント除去の基準は、インプラントの位置不良・インプラント周囲炎・インプラントの動揺や破折が挙げられます。

保証期間外で再埋入したい場合には、再度料金が発生します。脱落したインプラントを持って来ていただければ、埋入手術は半額と致します。

インプラントは、医療費控除の対象になりますので、確定申告の際にご留意ください。

インプラント義歯の長期経過について

インプラントマグネット入れ歯を製作する上で重要なことを説明します。毎日のお口と入れ歯の清掃が必要となります。定期的な入れ歯の調整が必要です。定期的なパーツの交換が必要で、そのときには費用もかかります。

インプラントも経年的には、他の歯と同じく歯周病になり、歯が抜けてしまう場合があります。また、重度のインプラント周囲炎になった場合、希望があれば、骨移植術と同料金で、リグロスを用いた再生療法を行うこともできます。インプラントを支える骨が半分以上失った場合、時間と料金がかかりますが、撤去して、骨造成をやり直して、インプラント再埋入することの方が成功率が高いです。

インプラント周囲炎にならないようにするためには、日々の口腔衛生状態の維持が大事になります。メインテナンス、ブラッシング指導も行います。

インプラントの禁忌症

絶対的禁忌症:免疫不全(肝機能障害、腎機能障害、ステロイド服用など)、1型糖尿病、血液疾患(白血病、血友病など)、心筋梗塞・脳梗塞・脳卒中を起こしてから6ヶ月以内、チタンアレルギー、頭頸部扁平上皮癌の既往、顎骨に放射線治療の既往(40Gyが境界領域)、ビスフォスフォネート系薬剤の服用歴、18歳未満、妊婦、統合失調症、鬱病、関節リウマチ、骨軟化症、骨形成不全症、薬物乱用(アルコールまたはその他の薬物)、血液透析

相対的禁忌症:2型糖尿病(血糖値のコントロール)、骨粗鬆症(骨移植・人工骨などで骨増生)、高血圧症(薬によるコントロール、静脈内鎮静法)、重度の歯周病(最初に歯周病の治療を行う)、喫煙者(術前4週間、術後8週間禁煙)、歯ぎしり・食いしばり(マウスピースによる治療)、埋入部位に局所的感染・残根がある(感染源の除去)※()は対策